2017年大河ドラマの主人公は戦国時代の女城主、井伊直虎。演じるのは柴咲コウさん。第一回目『井伊谷の少女』では幼い日の井伊直虎・とわ、井伊直親・亀之丞、小野政次(またの名を道好)・鶴丸が十前後という年齢で登場する。3人とも幼馴染という仲であり、共に遊んだり、共に学んだりするシーンが描かれている。だがこの3人にはこの後、残酷な運命が待ち受けている
おとわの両親は井伊直盛と千賀(ちか)だが、この時の井伊家には嫡男が誕生しておらず、子はとわだけだった。ちなみに母は千賀、直虎の幼名はドラマではとわと設定されているが、本当の名前は史実には残されていないため、これはあくまでもドラマ内だけでの設定となる。ただ千賀の晩年の名前である祐椿尼(ゆうちんに)は史実の名前となり、千賀は今川家の家臣・新野親矩(にいのちかのり)の妹となる。
劇中でとわと父直盛が遠乗りに出かけるシーンがあるのだが、そこで直盛は「おとわが継ぐか?わしの跡を」と語り、とわも「われもずっとそのつもりなのですが」と答える場面がある。これは今後のドラマ展開の伏線とも言えるやり取りであり、とても重要なシーンだ。
とわは、ドラマでは男勝りに育てられている設定だが実際にそうだったのかはもちろんわからない。何しろ戦国時代の女性の史料というのは、よほど力のある人物でない限り残されてはいない。井伊直虎に関してもそうで、女城主になったからとは言え、直虎の詳細がわかる史料はほとんど残されていない。そのため大河ドラマの内容も史実を描いたシーンは少なく、あくまでも多くのフィクションを加えた小説のドラマ化ということになる。ちなみに井伊家に伝わる正式な家系図に於いても女であるが故に直虎の名は省かれている。
体が弱いという設定になっている亀之丞は笛の名手であるわけだが、これは史実通りだ。歴史上の亀之丞、後の井伊直親も笛の名手として知られている。ただし体が弱かったという史実は残されてはいないため、この設定はフィクションなのかもしれない。
第一回目でとわと亀之丞は許嫁(いいなづけ)となる。これはもちろん史実通りだ。史実でも十前後の歳の頃に幼き日の井伊直虎と亀之丞は婚約している。だが亀之丞の父親である井伊直満が謀殺されてしまうことで、亀之丞の命も危ぶまれることになる。そこで井伊家と龍潭寺の住職である南渓和尚が協力し合い、亀之丞を密かに匿うことになった。
亀之丞を何から匿うかというと、それは今川家だ。この頃の井伊家は今川家に属していた。井伊直満(亀之丞の父)は、今川贔屓の井伊家家老・小野政直の讒言によって謀反の疑いをかけられ、今川義元の命により謀殺されてしまった。つまり井伊家は娘婿として井伊家の跡取りとなった亀之丞を、小野政直の魔の手から守ろうとしたというわけだ。その詳細に関してはこちらの記事に少し詳しく書いているため、ぜひ参考にしてもらいたい。
だいたいこの辺りまでが『おんな城主直虎』第一回目のあらすじとなる。史実通りのこととフィクションが上手く織り交ぜられた内容であり、二回目以降が楽しみになるストーリー展開がされている。ちなみに脚本を書かれているのは『世界の中心で、愛を叫ぶ』『仁-JIN-』『天皇の料理番』『白夜行』などの脚本を手掛けられた森下佳子さんだ。
森下佳子さんは涙を誘う台詞回しがとても上手な方なので、きっと今後『おんな城主直虎』でも涙を誘うシーンがたくさん出てくるのだろう。役者さんたちの好演、森下さんの脚本などなど、今後とても楽しみに感じられる大河ドラマであり、決して2016年の『真田丸』に引けを取らない素晴らしい作品になっていくのだと思う。
- 幼き日の井伊直虎・とわと、亀之丞の婚約が描かれている
- 幼馴染であるとわ・亀之丞・鶴丸を待ち受ける残酷な運命
- 史料が非常に少ない井伊直虎の史実とフィクション