井伊直虎とは男ではなく、戦国時代を強く生き抜いた女城主

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2017年NHK大河ドラマの主人公は井伊直虎と発表されている。直虎を演じるのは柴咲コウさんであり、井伊直虎とは男性の名でありながら、戦国時代を強く生き抜いた女性なのである。大河ドラマの主人公となるわけだが、しかし井伊直虎に関する詳しい資料は非常に少なく、史家も研究に苦心しているようだ。


筆者は最近『女城主・井伊直虎 』という本を拝読したのだが、井伊直虎を知るには一番オススメの一冊だ。時々小説ような文体を混ぜながら、井伊直虎のドキュメントをわかりやすく丁寧に伝えてくれている。だがこの本でさえも冒頭1/3程度は直虎はほとんど登場せず、直虎が直虎になるまでの井伊家の歴史紹介にページが割かれている。つまり井伊直虎とは、それほどまでに歴史的資料が残されていない人物なのだ。

そもそも井伊直虎の女性としての名も文書では残されていないため、許嫁がいた頃の姫としての名さえも謎に包まれたままだ。直虎は亀之丞(後の井伊直親)という婚約者がいたのだが、しかし様々な事情により命を狙われることとなり、亀之丞は身を潜めなくてはならなくなった。直虎は婚約者である亀之丞の帰りをいつまでも待ち続けたが、しかし亀之丞は潜伏先で出会った別の女性と結婚してしまう。

直虎はその失意により出家を決意する。最初は尼となるはずだったが、尼が還俗するという風習は当時はほとんどなかった。つまり一度尼になってしまうと、姫に戻ることはほとんどできない時代だったのだ。だが僧の場合はそうではなく、僧から還俗して戦国大名になった者は多い。井伊家の天敵であった今川家の義元も僧から還俗して大名になったひとりだ。

この頃の井伊家は跡取り不在に悩んでいたため、もしもの場合は直虎が井伊家を継ぐ必要があった。だが尼になってしまうとそれができなくなるため、この時直虎は次郎法師という名前で、尼ではなく僧として出家したのだった。そして結果的には還俗し直虎と名乗り、井伊家を継ぐことになる。

井伊直虎は、井伊直盛と新野左馬助の妹との間に生まれた子ということはわかっている。しかし生まれた日や年は記録として残されておらず、正確な年齢は謎に包まれている。史家の中には直虎と亀之丞の関係を追うことにより、亀之丞よりも2歳ほど上だったのではないかと予想している方もいる。

となると亀之丞は天文4年(1535年)生まれであるため、直虎は天文2年あたりに生まれたことになる。そして亡くなったのは天正10年(1582年)8月26日であることから、享年は49だったのではないかと言われている。だが確かな資料が残っているわけではないため、これも史家の推測の域はまだ出ていない。

直虎が亀之丞よりも2歳上だと仮定すると、亀之丞と婚約したのは天文13年で亀之丞9歳、直虎11歳ということになる。だがこの直後に亀之丞は潜伏生活に入り、18歳になる頃には別の女性と結婚し2人の子供がいた。それを知った直虎は失意により出家を決意するのだが、その時直虎は20歳くらいだったと推測される。

戦国時代、20歳を過ぎて結婚する女性は稀だった。有名どころでは織田信長の妹である市姫が20歳を過ぎて浅井長政に嫁いだくらいで、あとはほとんど例がない。この年齢も出家を決意する一因になったのではないかと史家は語る。

しかしいずれにせよ、婚約直後に命を狙われ姿を消した亀之丞を待ち続けたにも関わらず、その亀之丞は別の女性と結婚し子供を持ってしまった。この現実は直虎にとっては相当心の痛手となったはずだ。亀之丞の無事だけを祈り、7年も8年も待ち続けた結果がそれなのだから、直虎がその後未婚を貫いたことも少し理解できる気がするのである。
  • 2017年NHK大河ドラマの主人公は井伊直虎
  • 演じるのは柴咲コウさん
  • 井伊直虎とは戦国時代を生き抜いた女城主

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